A past pain



「ルーク!」
 “ルーク”は呼ぶ声に振り返る。思っていた通り、そこにはガイがいた。
「どうした。また、例の頭痛か?」
 少し心配そうな表情。優しい声。
「んー。いや、違うみたいだ。ちょっと痛い気がしただけで、声とかも聞こえないし」
 “ルーク”はそれに答える。
――気付かれずにすんだか。
 意識をルークと繋げたのは、伝えたいことがあるわけでも、ましてやさせたいことがあるわけでもない。
 ただ、その姿を見たかった。
「大丈夫なのか。無理はするなよ」
「別に無理なんかしてないっつーの。心配すんなって」
「ならいいが、具合悪かったら言えよ。お前が頑張ってるのはみんなわかってるから、ちょっとくらい休んだって誰も文句は言わないさ」
 柔らかい笑顔。俺がまだルークだった頃と変わらない、いやあの時よりもずっと暖かな笑み。もう2度と俺には向けられることのないものだ。

 とっくの昔に失ってしまったことは知っていた。7年前、ルークに付随する全てとともに、俺からガイは奪われた。
 それでも別に耐えられた。時折繋がるあいつから見たガイは、“ルーク”にとって変わらず優しかったから。それだけが“アッシュ”にとっての救いだった。
 だが、アクゼリュスが崩落した際、俺がオリジナルルークだと知ったガイは冷たい表情をしていた。“ルーク”には決して見せることのなかった嫌悪の表情。
 あのレプリカを心配するお人好しさは変わらなくても、俺に向けられる態度はまるっきり変わってしまった。
――そうだ。俺はガイの家族を殺した男の子どもだ。憎まれているのは知っていた。
「俺の親友はあいつだけだ」
 それでも耳から離れない声。レプリカなら親友になれた。なら俺は……もし俺があのままルークのままで居たら、俺は親友になれたのだろうか。
 無駄な仮定だ。過去はもう戻らない。失われたものは失われたまま、それでも手放せなかった想いだけが、ここに残っている。
「ほら、今日はもう休んどけ。後は俺たちがやっておくからさ」
 あやすように触れる手の感触。その暖かさが胸を締め付けた。
 俺にじゃない。わかっている。けれど虚しさよりも先にこみ上げてくるのは愛しさで。
――……っ
「? ガイ、今何か言ったか?」
「は? だから休んでおけって。聞いてなかったのか」
「じゃなくてその後! なんか声っつーか気配みたいな…………あ、まさかアッシュ?」
 接続を切る。自分がしているのが卑しい好意だということはわかっていた。気付かれたくは、ない。
「とんだ卑怯者だ。この俺が」
 それでも触れられた感触がこの肩に残っている。それがたとえ、幻想にすぎないとしても。
 何も知らなかった頃には戻れない。過去の罪は消えない。この想いも、酬われることはないだろう。
 願うならただ一つ――


彼の笑顔が消えないように






アッシュの性格がわからない! ので、ちょっとアッシュ違うかも。
ホントはクリアしてから書き始めたかったのですが
(TOSの悲劇があるから。知らんで書いたらゲームと矛盾したから)
でも無理です。辛抱できませんでした。
周囲のサイトさんの傾向はアシュルクらしく、アッシュ→ガイの報われない恋は駄目ですか?
つか、一番書きたかったことかけなかったからアッシュ→ガイでもう一話書くよ。


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